タヌキの大家日記

投資家タヌキの日々の雑感

コロナショックの経済学(タヌキ書評)

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GW中に私が読んだ本の中で最も興味深かった本を紹介しよう。

 

 

今回紹介する本は「コロナショックと日本経済」中央経済社出版、宮川大介編著(2021)である。

 

コロナショックで大きく揺れた1年が経済にどう影響を与えていたのか実証分析を交えながら痛快に説明した一冊である。

 

 

 

 

コロナショックは長期停滞を招く!?

 

「コロナショックで長らく日本を苦しめていた経済の長期停滞が復活する恐れがある。」

 

と本著では述べられている。

 

それは以下の理由からである。

 

・欧米の経営幹部の4割以上がU字型回復を予想しているのに対し、日本ではL字型を予想している経営幹部が半数であるため。

 

・2020年4-6月度の貯蓄率が22.6%と前年の貯蓄率を20.1%上回る以上な数値になっており、将来の見通しに家計が過度に悲観的になっている。

 

・2020年7月期のGDP回復の鈍さが先進国の中でもトップクラス。

 

以上の要素は2008年の金融危機の際にも同じことが日本で起こっており、対応が遅れたことから危機に対する回復が遅れた過去がある。そのため、筆者は同様に長期停滞に陥る可能性を示唆している。

 

それらに対応するために、ポストコロナ時代の政府には、マクロ経済安定や公共財の供給により積極的な役割を果たす必要性が述べられている。

 

 

コロナショックで倒産数が減った!?

 

コロナ禍における移動制限の中で企業業績は非常に落ち込んでいたが、驚いたことに全国企業倒産件数については前年同月比21.7%減少しているのである。

 

これは、コロナによる経済的な負のショックに対して、

・政府が持続化給付金や雇用調整補助金といった直接的な補助金支給

・民間金融機関による資金供給

政府系金融機関による緊急対応融資

など大規模な政策措置が講じられたことに起因している。

 

これらの政府支援に対して倒産件数が少なくなっている事実から、政府が金融面からの企業支援策が過剰になっていることが示唆される。

 

つまり、コロナが無くても倒産していた企業を過剰な補助金で救っており経済厚生を歪めていた可能性があるのだ。

 

これに対して、データに基づいた政策を行うことで過剰な補助金で税金の無駄を省くことができたのではないかとの主張もあった。

 

 

まとめ

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※本書より抜粋

 

 

以上、私が本著で気になった点をピックアップしたが、それ以外にもコロナショックと日本経済との関連性をマクロ経済や医療体制、地域経済、政策などの面から多面的に鋭く分析されている。

 

興味のある方はぜひ手に取って読んでいただきたい。